不妊治療で妊娠することの不安
自然に受精した胚と体外受精の胚をPGT-A検査で比較
今回ご紹介したいなと思ったのは、
京野アートクリニック高輪のホームページで公開された
「体内で受精した胚のPGT-A~体内受精の染色体異数性は体外受精と変わらない~」
という論文についてです。
- PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)
取り出した胚の染色体数を調べる着床前検査です。
基本的には体外受精と組み合わせて実施されます。
日本では日本産科婦人科学会が「命の選別につながる」と
否定的だったため行われてきませんでしたが、
今回ご紹介するレポートを発信した京野アートクリニックでは
日本産婦人科学会主導の「PGT-Aの特別臨床研究」に参加し、
実施するようになったようです。
それでは本題、
「体内で受精した胚のPGT-A~体内受精の染色体異数性は体外受精と変わらない~」
の内容に触れていきます!
この研究が目を引いた理由は、
PGT-Aを体外受精と別個で行い、
体外受精で得られた胚との結果を比較していたからです。
胚盤胞まで培養してから5個から10個だけ細胞を採取し、
染色体を網羅して異数性がないかどうか調査します。
では、体外受精と別にPGT-Aを行ったとはどういうことなのか、
不思議だと思いませんか?
このレポートでは、人工授精の後に
受精した胚を子宮洗浄で取り出し、検査したと記載されています。
採卵によって胚を得る体外受精と、
採卵を行わず成り行きに任せる人工授精に対する
PGT-Aの効果の比較といったところでしょうか。
調節卵巣刺激を行って得た胚の正倍数性率は54%で、
体外受精では51%、ほとんど差がみられなかったそうです。
胚の形態については、
前者の正常胚の割合が73.3%で、体外受精では43.3%と、
体外受精で得られる胚の正常率が低めとなっています。
このことが、不妊症体質の方が抱えがちな
不安にひとつの答えをもたらします。
不妊症体質による不安
「不妊症体質の私でも高度先進医療の力を借りれば妊娠率を上げられる、
でも本当にそれでいいのだろうか」
「不妊症体質は子孫を残す能力がないということ、
そのような遺伝子を残していいのだろうか」
不妊症に悩むご夫婦のうち、少なくとも何割かは
痛みとともに共感していただける
疑問なのではないかと思います。
調節卵巣刺激を行って得た胚の正倍数性率は54%で、
体外受精では51%、
胚の形態については、前者の正常胚の割合が73.3%で、
体外受精では43.3%、この数字はサンプル数が少ないため
参考にしかならないそうですが、思考の手掛かりには十分なりました。
つまり、体外受精を必要とするゾーンは
正常なものを選別して行う体外受精まで進めば、
胚は正常な成長を見せるということです。
不妊症体質の子孫への継承を懸念する方にとって、
PGT-Aは有用な検査だということがわかりますね。
PGT-Aは臨床研究中
私の知る神戸ARTレディスクリニックでも
PGT-Aは臨床研究の対象になっていました。
体外受精の成功率を上げるためにPGT-Aが有用かどうか、
有用であればどれくらい影響するのかを確認するための研究です。
とはいえ、治療データを使用するとなると
ご自身のプライバシーが損なわれるのではないか、
個人情報が不当に取り扱われるのではないかと
ご心配な方もいらっしゃるでしょう。
神戸ARTレディスクリニックでは患者様からの
同意(インフォームド・コンセント)を得ること(オプトイン)を
徹底していて、臨床研究への参加を拒む「オプトアウト」の
周知にも力を入れているそうです。
同意書を提出した後でも同意撤回書を提出すれば
参加を回避できますし、最初から確認書でデータの使用を
拒否することもできます。