体外受精に至る道~女性側の特殊検査
不妊治療は検査、治療と、内容がステップアップしていきます。
実施項目が多く費用が高額だったりと、
どうしても身体的、経済的負担が大きくなります。
医療の提供者からしても、患者にはなるべく
負担をかけたくないという想いがあり、
簡単な検査、侵襲性の低い治療から
徐々に進めていく手法を取っているのだそうです。
最初から「私には体外受精しかない!」と
覚悟してレディスクリニックを受診する
女性はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか?
余談ですが、私が最初に受診したレディスクリニックで、
「あなたの場合はすぐにでもきちんと効果がある治療をしたほうがいい」
と言われました。
体外受精を勧められたわけですね。
これは年齢や状況から見て正しいアドバイスだったのです。
しかし私自身に知識がなく、認識が甘かったころなので
反発してしまいました。
今ではあの時の医師はむしろ誠実な方だったのだと思っています。
先月ご紹介したのは体外受精に至るまでに行う検査のうち、
女性が受ける一般的な検査でした。
https://shinwo.hatenablog.com/entry/2021/12/22/132820
今回は、女性が受ける検査のなかで特殊なものを
簡単に解説したいと思います。
体外受精に伴う検査はその先にあって、
いわば中間的な位置づけです。
この段階で問題が見つかった場合、その問題を解消するための
治療を行ってから体外受精という流れになります。
不妊治療の初期に行う女性側の特殊検査
・子宮鏡検査(ヒステロスコピー)
子宮に内視鏡を挿入して視覚的に
子宮内部を診断する検査です。
私の知っている神戸ARTレディスクリニックの
検査で使用する子宮鏡は端子が3mmという極細なので、
痛みをほとんど感じずにすむのだとか。
外来でも受けられます。
子宮内腔を観察して、形状の異常、子宮内腔癒着、
子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫の有無、
また、筋腫やポリープがあればその大きさなどを
判別できます。
検査で病変が見つかり、内視鏡での切除が可能であれば
そのまま手術にも移行可能です。
・腹腔鏡検査
へその下に小さな穴をあけ、腹腔膜のうちがわに
内視鏡を挿入し、内部をテレビモニターに映し出して
観察する検査です。
明らかに不妊症なのに原因が見つからない時、
子宮内膜症が疑われる時、卵管周囲の癒着が
疑われる時に行われます。
必要があればそのまま病変部を剥離、切除などの
手術に移行可能です。チョコレート嚢胞なども摘出できます。
・卵管鏡検査と卵管鏡下卵管形成術(FT)
卵管閉塞が疑われる時に行われる内視鏡検査です。
卵管内部に卵管鏡とカテーテルを挿入するので、
この検査によって卵管閉塞が解消し、
妊娠が成立するケースが少なくありません。
・糖負荷とインスリンの測定
不妊の原因になることが分かっています。
糖負荷とインスリンの値を確認し、
異常があれば肥満や糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群の
治療を受けましょう。
・自己免疫疾患、血液の凝固異常の検査
流産を繰り返すタイプの不妊症の方は
染色体異常の可能性があります。
ご夫婦いずれかに染色体の構造異常がある場合、
卵子が受精しても着床せず、流産してしまうのです。
神戸ARTレディスクリニックでは採血で行う
「染色体検査」をご夫婦に、顕微授精で移植する胚選別に
「PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)」もしくは
「PGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)」もしくは
「PGT-M(着床前胚遺伝子検査)」
という検査を実施しているそうです。
以上、治療前に行う女性側の特殊検査でした。
染色体検査についてはご夫婦で一緒に受けてください!
「自分たちは健康だから遺伝子も問題ないのでは?」
と思うかもしれませんが、ご本人には問題なくても、
次世代に異常が顕在化するタイプの染色体構造異常
というものがあります。
染色体検査は健康な次世代にたすきをつなぐために
必要な検査なのです。流産経験があるご夫婦には
染色体検査の受診を推奨します。
子宮鏡検査では通常は閉じている子宮口を開いて
器具を挿入するため、身体に対するリスクが
多少なりとも発生します。
腹腔鏡検査、卵管鏡検査はさらに難しくなります。
信頼できる医療機関、信頼できる医師を選んで受診することが大切です。